営業職に向いてないと感じたら|辞める前に試したい営業の形の変え方

机の上で営業の進め方を書き出して見直す人の手元

「営業、向いてないんじゃないか」。
上司にそう言われたか、自分でそう思いはじめたか。

適性は、あります。それでも、ある程度のところまでは、頑張れば届く。私はそう考えています。
だから、向いていないと決めるのは、まだ早い。決める前に、営業の形を一度変えてみてほしいんです。

訪問の営業でうまくいかなかった人が、電話の営業に移って成果を出したこともあります。
この記事では、どこまで踏ん張るかの線と、自分の特徴に合う営業の形の見つけ方を書きます。
読み終えるころには、踏ん張りながら形を変えるのか、営業以外を考えるのか、職場の条件を確かめるのかを、自分で決められるようになります。

「向いてない」と決める前の踏ん張りどころ

営業の形とは、新規の訪問かテレアポか、問い合わせへの対応か、といった売り方の違いのことです。いまの営業の形に結びつく苦手なら、向いていないと決める前に、求められた動き(電話や訪問の件数、勤怠)をやり切ってください。やり切りながら、合う形を探す準備を進めてかまいません。

厳しく聞こえるかもしれません。それでも書くのは、営業を離れたあとで「別の形なら届いていた」とわかっても、取り戻せないからです。

上司の「向いてない」の受け止め方

上司に「向いてない」と言われたら、その言葉を、求められている数字に届いているかどうかで確かめ直してください。

届いていないなら、言われたことの中身は「いまの数字が足りない」という事実です。数字が足りない理由は、性格だけでなく、いまの営業の形との相性にあることもあります。

甘えか、適性か

根性論に聞こえても、ある程度のところまでは、どんな仕事も頑張れば届くと、私は思っています。

まずは、求められているポジションで成果を出すまで頑張る。その頑張りの中身は、求められた件数と勤怠をやり切ることです。甘えか適性かを決めるのは、そのあとで間に合います。やり切る前に「向いてない」で辞めると、何が足りなかったのかがわからないまま、次の場所へ行くことになります。

踏ん張る時間は残っている

私が見てきた範囲では、会社が人を切るのは、勤怠や態度が崩れたときです。数字が出ないというだけで、会社にいられなくなることは、まずありません。

苦手がどこに結びついているか

形を変えるか、営業を離れるかは、苦手の中身で分かれます。

断られる回数がつらい。電話をかけるのがつらい。初対面の人と話すのがつらい。こうした苦手は、いまの営業の形に結びついています。形を変えれば軽くなる苦手なので、いまの場所で求められた動きをやり切りながら、合う形を探してください。

一方で、人に何かを勧めること自体が苦しい、といった苦手は、営業という仕事全般に結びついています。こちらは、形を変えても残る性質のものです。その場合の考え方は、後半の「営業以外へ移る判断の線」に書きました。

いまの苦手が形に結びつくものなら、次の章へ進んでください。

営業の形の種類

営業は、誰に売るか、どう出会うか、どこで話すかで形が分かれます。つらさの多くは、その形から来ています。

つらいのは営業か、いまの形か

新規の訪問やテレアポのつらさは、断られる前提で、こちらから接点を作りにいく形から来ています。

新規開拓は、合う人には力がつく形です。ただ、合わない人がそこで数字を出せないとき、合っていないのは営業全体ではなく、その形です。

営業の形を分ける軸

私は面談で営業の経験を聞くとき、まず売り方を細かく分けて聞きます。個人向けか法人向けか、新規か既存か、電話か訪問か。同じ「営業経験3年」でも、中身がまったく違うからです。

面談で聞く項目のうち、自分の形を当てはめやすいのは、次の3つです。

軸 分かれ方
誰に売るか 個人向け/法人向け
どう出会うか 新規(自分から取りにいく)/反響(問い合わせを受ける)/ルート・既存(決まった取引先を回る)
どこで話すか 訪問/電話・オンライン

このほかに、外回りをせず会社にいながら、関心を示した相手にだけ電話をかける内勤の営業(インサイドセールス)もあります。くわしくは次の章で書きます。保険、不動産、ITといった業種の名前より、この軸で見たほうが、自分に合うかどうかを当てはめやすくなります。

特徴ごとに合う営業の形

いちばんつらい場面から自分の特徴を選ぶと、つらくなりやすい形と、活きやすい形が見えてきます。

自分の特徴を表に当てはめる

よく挙がる「向いていない人の特徴」は、職場の条件がそろっているときにしか当たりません。人にそれほど興味が持てない人のほうが、成果を出すこともあります。この2つは、営業を辞めたいと感じる原因を切り分けた記事の「向いていないと感じる原因」に書きました。ここでは、特徴を営業の形に当てはめます。

診断を受けるより、いちばんつらい場面を表に当てはめるほうが、次に何をするかまで決まります。いちばんつらい場面に近い行を1つ選んで、「活きやすい形」の列を見てください。

特徴 つらくなりやすい形 活きやすい形 活きやすい形でも残るつらさ
断られるのがつらい 新規の訪問、テレアポ 反響営業、ルート営業 問い合わせの数や、取引先との関係に数字が左右される
電話をかけるのが苦手 テレアポ 対面の営業、法人向けの内勤の営業 対面は移動と準備に時間がかかる。内勤も電話はゼロにならない
初対面で話すのが苦手 新規の訪問 ルート営業 長く付き合う相手との関係を保ち続ける
話すこと自体が苦手(口下手、内向的) 新規の訪問、テレアポ ルート営業、反響営業(最初の接点が相手から来るぶん入りやすい) 話す量そのものはゼロにならない
強く押せない 押し切って契約をもらう商談 相手が自分で決めるのを支える個人向けの営業(転職支援のキャリアアドバイザー、住宅の反響営業など) 相手が決めるまで待つ時間が長い

表は、営業の形ごとの一般的な傾向をまとめたものです。同じ形でも、会社によって中身は変わります。書き出した場面がどの行にも近くないなら、つらさは形ではなく、ノルマや上司といった職場の条件から来ている可能性があります。その確かめ方は、成果を左右する6つの環境をまとめた記事に書きました。

断られにくい反響営業

反響営業は、広告やサイトを見て問い合わせてきた相手と話す営業です。最初の接点を相手が作っているので、新規の訪問やテレアポに比べると、話を聞いてもらえないまま断られることが少なくなります。

断られる回数がいちばんつらいなら、まず候補に入れてほしい形です。

優しい人が活きる個人向けの営業

面談で見てきた中に、法人向けではあまりうまくいかなかった人が、個人向けの、相手の気持ちに寄り添う営業に変わって成果を出した例があります。共感力が高い人で、契約を取り切ってお金をもらうことが出口になる仕事より、相手の転職を決めることが出口になる仕事(転職を支援するキャリアアドバイザー)で力を出しました。営業を辞めたいと感じる原因を切り分けた記事の「同じ人でも、売り方が変わると数字が変わった」で紹介した人です。同じ記事には、訪問から反響へ、電話から対面へ移って成果が出た人の例もあります。

強く押せない優しさは、押し切って契約をもらう商談では弱点に見えます。けれど、相手が自分で決めるのを支える商談では、強みになることがあります。

テレアポとは違う内勤の営業

電話が苦手だから、内勤の営業も無理だと思っている人もいるはずです。

私が知っている法人向けの内勤の営業(インサイドセールス)は、テレアポとは違います。ウェブセミナーなどで「この商品に興味がある」と反応した相手にだけ電話をかける仕事で、セールスというより、マーケティングに近い。アポイントが取れなければ、その企画そのものがなぜ外れたのかを見直すことになります。

合う形にもあるつらさ

どの形にも、つらさはあります。反響営業は問い合わせの数に数字が左右され、ルート営業は取引先との関係を落とせず、内勤の営業は企画の成果を問われます。どのつらさなら引き受けられるかで選んでください。

ルート営業を選ぶときに確かめたい新規の割合や担当社数は、「ルート営業はやめとけ」は本当かを確かめる記事に書きました。

営業の形を変える進め方

まず社内で形を変えられないかを考えてください。転職で移るなら、移りにくい方向と、求人票での見分け方を先に知っておきます。

異動の希望は特徴で伝える

異動を願い出るときは、「向いていない」と伝えるのではなく、「自分のこの特徴なら、この形で数字を出せる」と伝えてください。あわせて、いまの部署で求められた動きは、勤怠も含めてやり切っていることを示します。

会社が見るのは、いまのポジションで頑張っているかどうかです。そこが崩れていると、異動の希望が、ただ逃げたいだけに見えてしまうこともあります。

個人向けに移る前に知っておく順番

個人向けの営業を選ぶのは、まったく問題ありません。ただ、転職で個人向けに移るなら、知っておいてほしい順番があります。

人を紹介する立場で見ていると、転職では、個人向けの営業から法人向けの営業には移りにくく、法人向けの経験があれば、個人向けも次の候補に入ります。いま法人向けにいる人は、その経験が次の行き先を広げてくれます。いま個人向けにいる人が法人向けを目指すなら、法人向けの経験をある程度積む必要があります。

形を変えたときの給料

給料の決まり方は業界で大きく変わるので、形を変えただけで下がるとは決まりません。ただ、訪問営業は歩合の割合が大きいことが多いので、訪問営業から移るときは、固定給と歩合の比率が変わることがあります。業界ごとの給料の決まり方は、給料の高い仕事の記事の「営業職の給料の決まり方」に書きました。

求人票で営業の形を見分ける

求人票では、「反響」「問い合わせ対応」「既存顧客」「ルート」「インサイドセールス」といった言葉で、形の見当がつきます。書かれていなければ、面接で「最初にお客さんと接点を作るのは、誰ですか」と聞いてください。営業が自分で作るのか、会社が問い合わせを集めているのかで、形がわかります。

求人票に出てこない営業の形は、その会社に人を紹介している転職支援の担当者なら知っています。

営業以外へ移る判断の線

苦手が営業全般に結びついているなら、営業以外を考える段階です。

形を変えても残る苦手

営業を辞めたいと感じる原因を切り分けた記事の「営業を離れないと消えないつらさもある」で、環境を入れ替えても残るものとして、次の3つを挙げました。

人に何かを勧めること自体が、内容にかかわらず苦しい。
数字で評価される状態そのものに耐えられない。
相手の反応を、自分の価値の評価として受け取ってしまう。

これらは、形を変えても残る性質の苦手です。当てはまるなら、営業以外の職種を考えてかまいません。

20代は経験、30代は専門性

営業以外へ移るなら、年代で考え方が変わります。私は、20代は経験を積む時期、30代は専門性を磨く時期だと考えています。

20代のうちは、経験を積むこと自体に意味があります。営業で過ごした時間も、その経験の1つです。30代なら、どの業界やどの職種で専門性を作るかの軸を決めてから移ってください。会社を転々とすればいいわけではなく、軸の選び方が大事です。

移る先は、営業事務、カスタマーサクセス(契約後のお客さんを支える仕事)、人事や企画など、営業の経験が活きる方向から考えると探しやすくなります。選ぶときは、やりたいことを探すより、やりたくないことを消していくほうが、選びやすくなります。やりたくないことを、営業の作業ごとに分けて消していく方法は、「営業やりたくない」と思ったときの記事に書きました。

最初に書き出す、いちばんつらい場面

今週のうちに、営業でいちばんつらかった場面を1つ、紙に書き出してください。

書き出した場面を、表に当てはめてください。いまの形に結びつく苦手なら、踏ん張りながら形を変えます。営業全般に結びつくなら、営業以外を考えます。どの行にも近くないなら、職場の条件を確かめてください。

適性は、あります。それでも、ある程度までは頑張れば届きます。向いてないと決める前に、営業の形を一度変えてみてください。