「営業辞めたい」は甘えじゃない|向いてないと感じる人がやるべきこと

窓辺で仕事と今後の働き方について考える人のイラスト

朝、会社に行くのがつらい。
断られ続けて、数字を詰められるが怖い。
それでも「辞めます」の一言は言いだせない。

正直、もう営業なんかやめたい。
自分は営業には向いていないんじゃないか。
そう思う人は少なくありません。

私はこれまでに、3,000人以上と面談してきました。
その多くが、営業職を希望する人か、営業から離れようとしている人です。

そこで気づいたことがあります。
営業とは、適性より環境が大切です。

「自分は営業に向いていない」と言っていた人が、
環境を変えただけで数字を出しはじめる場面を、何度も見てきました。

どんな人も、正しく頑張れば結果を出せるようになります。
それでも、「より、結果を出しやすい環境」は確実に存在します。

営業は、素晴らしい仕事です。
これから先、どれだけAIが進歩しようとも、営業職だけは絶対に必要とされる仕事だと思っています。
だからこそ、「向いてない」とあきらめないでほしい。

この記事では、「環境の大切さ」を私の経験から伝えていきます。

じつは、それ「甘え」なんかじゃない

営業を辞めたい。でも、「辞めたいと思うのは、自分が甘えているからではないか」と引っかかっていませんか。

やってもやっても数字が出ない。
周りは続けているのに、自分だけがつらい。
そもそも、人と話すことが得意ではない。

こうした状態が続けば、「営業に向いていない自分が悪い」と考えてしまうのも無理はありません。

ただ、辞めたいと感じたこと自体は、甘えではありません。 数字が出ない原因は、本人の努力だけで決まるものではないからです。ノルマの決め方、売り先、商材の資料、評価の基準、上司、時間の使い方によっても、結果は変わります。自分を責める前に、まずは何がつらいのかを分けて考える必要があります。

そのとき、「このまま数字が出なかったら、会社を辞めさせられるのではないか」と不安になる人もいます。

私が見てきた現場では、成果が出ていないという理由だけで切られることは、まずありません。問題になるのは、勤怠と勤務態度です。

数字が出ていないことと、会社にいられなくなることは別の話です。 まずは、この2つを切り離して考えてください。

苦しくなる原因は、「数字=自分の価値」の構造

では、なぜ営業だと、これほど自分を責める方向に行ってしまうのか。
その理由は、営業の成果が個人の名前つきの数字で、毎月評価されてしまう構造だからです。

どの仕事にも、うまくいく月といかない月があります。ただ、その差が「今月◯件、達成率◯%」という一行になって、名前と並べて貼り出される職種は、そう多くはないはずです。
営業では、それが毎月起きます。
断られた回数も、そのまま自分に返ってきます。

ここで何が起きるか。原因が商材にあっても、売り先の決め方にあっても、目標の置き方にあっても、表に出るのは「あなたの数字が低い」という結果だけです。
原因の中身は、数字には残りません。

だから、たとえ環境が理由で数字が出ていなかったとしても、自分のせいだと考えます。
同僚が売上を上げていれば、なおさら「自分は向いていない」「自分は甘えている」と考えがちです。

数字が出ていないという事実と、それは自分が悪いという判断は、別のものです。
結果が出ているかどうかは、数字を見れば、わかります。
だけど、結果が出ない原因は、あなたが悪いと決まったわけではありません。

眠れない日が続いている。食事が入らない。朝になると動悸がする。そうした状態が続いているなら、原因を探すのはあとにしてください。まず休むことと、専門家に相談することが先です。 その状態では、浮かぶ選択肢が「いますぐ全部やめる」か「限界まで我慢する」の2つになります。休職も、担当替えも、部署異動も、そのときは思いつきません。

結果が出ない原因のほうを分解していきましょう。

営業を辞めたい理由の内訳

営業を辞めたくなる理由は、自分の側にあるものと、職場の側にあるものに分かれます。 このうち職場の側は、本人がどれだけ頑張っても動きません。

データから見る辞めた理由

辞めた人が理由として口にする言葉は、自分の中身よりも、職場の条件のほうに集まっています。 厚生労働省が毎年おこなっている「雇用動向調査」で、前の職場を辞めた理由を本人に聞いた項目を見ると、令和6年の男性の回答は次のようになっています。

辞めた理由 男性計 25〜29歳 30〜34歳
給料等収入が少なかった 10.1% 16.9% 11.7%
職場の人間関係が好ましくなかった 9.0% 11.5% 9.6%
労働時間・休日等の労働条件が悪かった 8.6% 9.8% 10.9%
会社の将来が不安だった 7.4% 8.1% 14.9%
仕事の内容に興味を持てなかった 4.4% 5.6% 5.7%
能力・個性・資格を生かせなかった 3.8% 4.7% 3.6%

給料、人間関係、休みの取り方が上位に並び、仕事の中身そのものを挙げた人は、そのどれよりも少ないです。

出典は厚生労働省の令和6年 雇用動向調査です。全職業を合わせた数字で、営業職だけを取り出した内訳ではありません。理由の項目はこのほかにもあり、ここに並べた6つを足しても全体の4割ほどにしかなりません。

ノルマも商材も上司も、自分では選べない

いまの会社に入るとき、自分の意思で決められたものがどれだけあったでしょうか。
給料はどう決まるか。
ノルマはどれだけ重いか。
誰が上司になるか。
何を売るか。
何時に商談が入るか。

どれも、入社した時点ですでに決まっていたものです。 あなたの努力では動かせません。

営業がつらくなると、まず自分を疑います。
トークが下手なんじゃないか。
押しが弱いんじゃないか。
メンタルが弱いんじゃないか。

けれど、トークを磨いても、押しを強くしても、給料の決まり方は変わりません。ノルマの重さも、誰が上司になるかも、変わりません。

「向いていない」と感じる原因

「向いていない」と感じるとき、その根拠になっているのは、たいてい数字です。
取れていない。同期に置いていかれている。だから自分には合っていない。

ただ、その数字がどこまで自分の力で決まっているのかは、まだ確かめていないはずです。売り先を誰が決めているのか。商材の資料はあるのか。やり方を教わったことがあるのか。条件が違えば、同じ人が同じだけ動いても結果は変わります。

先に確かめるのは、いまのあなたの数字が、職場の条件でどこまで決まっているのかです。 適性を判定するのは、そのあとで間に合います。

断られる回数は、渡されたリストで決まる

飛び込みでもテレアポでも、断られる回数がつらさの中心にあるなら、まず疑うのは渡されたリストです。

同じ人でも、渡されるリストが変われば反応率が変わります。何年も使い回されているリストと、直近で問い合わせのあった先のリストでは、最初の一言に対する返事が変わります。断られる回数は、誰に当てているかで大きく動きます。

自分の口下手を責める前に、そのリストが誰の手で、どういう基準で作られたのかを思い出してみてください。

よく挙がる「向いていない人の特徴」は、条件つきでしか当たらない

「営業に向いていない人の特徴」として、よく並ぶのは次のような項目です。
コミュニケーションが苦手。
押しが弱い。
ストレスに弱い。

これらが当てはまるのは、職場の条件がひととおり整っている場合だけです。売り先が絞られていて、商材の説明資料があり、上司が商談に同行してくれる。そういう職場で結果が出ないなら、適性の問題を考える意味はあります。

けれど、そのどれもない職場で結果が出ないことを、性格のせいにするのは筋が違います。口数が少なくても、資料の作り込みと事前準備で数字を積んでいる人はいます。

人と話すのが好きかどうかも、同じです。人にあまり興味が持てない人のほうが、かえって成果を出すことがあります。

自分の特徴に合う営業の形(反響・ルート・内勤など)の選び方は、営業職に向いてないと感じたときに、営業の形を見直す記事に書きました。

成果を左右する6つの環境

営業の成果を左右する条件のうち、職場が用意するものが6つあります。

自分の職場に当てはめながら読んでみてください。欠けているものがあれば、そこが最初に疑う場所になります。

ノルマに根拠があるか

同じ「月◯件」でも、その数字の作られ方には2種類あります。

積み上げ型は、市場の規模と過去の実績から1人あたりの数字を出します。届く根拠があるので、未達のときに「何が足りなかったか」を検証できます。割り振り型は、会社全体の目標を人数で割っただけです。市場を見ていないので、届かない数字が最初から乗っていることがあります。

見分け方は簡単です。
前年比で自動的に上がっていく。
新人とベテランに同じ数字が乗っている。
未達の理由を誰も聞いてこない。

このどれかに当てはまるなら、あなたが追っているのは検証されていない数字です。

売り先を決めるのは誰か

誰に売るかを会社が決めている職場と、リストを渡されて数を打つ職場があります。

会社が決めている職場では、断られたときに「この層には響かない」という情報が残ります。リストを渡されるだけの職場に残るのは、断られた回数だけです。同じ100件を回っても、片方は次につながり、片方はただ消耗していきます。

ターゲットを決めるのは、本来は会社の仕事です。 それを個人の「開拓力」という言葉に置き換えている職場では、うまくいかない原因が全部あなたに返ってきます。

商材の資料が社内にあるか

扱っている商材に自信が持てない。これも、辞めたい理由の1つです。

自信は、気持ちの持ちようからではなく事実から生まれます。

導入した会社がどう変わったかの記録があるか。
他社と比べてどこが強いのかの整理があるか。
値段の根拠が示されているか。

これらが社内にあるかどうかで、自信の持ちやすさは決まります。

資料が1つもない状態で「自信を持って勧めろ」と言われているなら、それは無理を言われています。導入事例の1本も、他社との比較表も、値段の根拠も手元にない。その状態で言葉に詰まるのは、売る側として当たり前のことです。

評価の基準が見えるか

何をすれば評価されるのかが言葉になっている職場と、なっていない職場があります。

なっていない場合、努力しても方向が合っているかがわかりません。件数を増やすべきなのか、単価を上げるべきなのか、既存を守るべきなのか。判断できないまま動くので、成果が出ても偶然に見えるし、出なくても理由がつかめません。

給与テーブルが見られるか。
プロセスが評価に入っているか。

この2つを確かめてみてください。どちらも見えないなら、努力が報われる保証がありません。

上司が育成をしているか

管理と育成は、本来は別の仕事です。

数字を集めて足りない人に声をかけるのが管理で、どうすれば取れるかを一緒に考えるのが育成です。「なんで取れないんだ」は、そのどちらでもありません。 それは、上司が自分の不安を部下に渡している状態です。

商談に同行してくれるか。
録音や議事録を一緒に振り返ってくれるか。
売れている人のやり方を教えてくれるか。

1つも当てはまらないなら、あなたは教わったことがないまま数字を求められています。

商談に使える時間があるか

営業の成果は、商談の数と受注率の掛け算で決まります。ところが1日の時間のうち、商談に使えている時間はどれくらいあるでしょうか。

移動、日報、社内会議、見積書の作成、既存客からの電話対応で1日が埋まると、商談の数はどう頑張っても増えません。にもかかわらず、増えない結果は個人の努力不足として扱われます。

1日の予定表を、誰が組んでいるでしょうか。移動の順番、会議の時間、日報の締切。営業本人が動かせる部分は、思っているより少ないはずです。

自分の環境の確かめ方

面談では、この順番で聞いています。

何を売っているかを、先に分解する

「営業を3年やっています」と言われても、私はまだ何もわかりません。だから最初に、売っているものの中身を聞きます。
個人向けか、法人向けか。
形のあるものか、無いものか。
中小企業が相手か、大企業が相手か。
売り切りか、月額で続くものか。
新規を取りに行くのか、既存を回るのか。
電話か、オンラインか、訪問か。

あわせて、どこまでを担当しているかも聞きます。アポイントを取るところまでなのか、商談から契約まで持つのか、その両方なのか。

ここが決まって初めて、「営業経験3年」の中身が見えます。 そして、次にどこへ行けるかの範囲も同時に決まります。知らずに次を選ぶと、積んだ経験が持ち越せません。

商談の数と受注率のどちらが低いかを出す

次に数字です。月の架電件数とアポイントの獲得数、商談の件数と成約の件数、そして単価。ここまで出せると、どこで詰まっているかが見えます。同僚と比べられるなら比べてみて、比べられないなら自分の前の期と比べます。

商談の数が少ないなら、原因は売り先の決め方か、時間の使い方にあります。数は出ているのに受注率が低いなら、疑うのは商材の資料と、教わる機会です。この切り分けだけで、6つのうち見るべき場所が半分に減ります。

1日のうち商談に使えている時間を数える

1週間でいいので、時間の使い道をメモしてみてください。移動、事務、社内会議、商談。細かく分ける必要はありません。

移動と事務で1日が埋まっているなら、そこがボトルネックです。まず数字にして、見せられる状態を作ってください。

達成率は、目標のほうを疑ってから見る

面談で達成率を聞くと、たいていの人は数字で答えてくれます。ただ私は、その数字をそのままは受け取りません。同じ部署の中で何番目だったかを、必ず一緒に聞きます。

部署の全員が未達なら、それは個人の成績の話ではなく、目標の置き方の話です。もう1つ見るのが粗利率です。売上の目標が、その商材の粗利で本当に成り立つ数字なのかどうか。ここが合っていない目標は、誰が追っても届きません。

自分の達成率を疑う前に、目標のほうを疑ってください。順番を逆にすると、検証されていない数字を追い続けることになります。

足りないものごとに、変わることが違う

足りていないもの いま起きていること 埋まったときに変わること
ノルマの根拠 届かない数字を毎月追い、未達が常態になっている 何が足りないかを検証できるようになり、達成の見込みが立つ
売り先の設計 断られる回数だけが増え、次に活かせる情報が残らない 反応する層がわかり、同じ件数でも受注が増える
商材の資料 説明に自信が持てず、値段の話で押し切られる 比較と根拠で話せるようになり、値引き以外の決め手ができる
評価の基準 努力の方向が定まらず、成果が出ても再現できない 何を伸ばせばいいかが決まり、成果が積み上がる
上司の育成 詰められるだけで、やり方が改善しない 売れている型を借りられるようになり、受注率が動く
時間の設計 商談の数が増えず、努力不足として扱われる 商談に使える時間が増え、掛け算の片側が伸びる

埋まったときに変わるのは、成果が出るまでの距離です。

社内でできる対処法

足りないものが見つかったら、いきなり辞める前にできることがあります。

変えられる可能性がいちばん高いのは、直属のマネージャーとの関係です。

小手先の攻略法に聞こえるかもしれません。ただ、私が見てきた範囲では、ここから動くことが多いです。社員一人ひとりと仲良くする必要はありません。マネージャーとだけ関係ができていれば、チームの中で何が起きているかを理解してもらえて、実際に変えてくれることがあります。

リストの割り振りも、同行の頻度も、誰と組むかも、決めているのはたいていマネージャーです。上を飛ばして人事に言うより、まずここからです。

「上司に頼むなんて無理だ」と感じるかもしれません。詰められている相手に何かを頼むのは、たしかに勇気が要ることです。

ただ、頼み方には型があって、型に沿えば通る確率は上がります。そして通らなかったとしても、頼んだという事実が次の判断材料になります。

上司には、商談の同行を頼む

上司に相談するとき、「どうすれば取れますか」と聞くと、たいていは精神論が返ってきます。抽象的な問いには抽象的な答えしか返らないからです。

かわりに、こう頼んでみてください。「次の商談に一度だけ同行してもらえませんか」。具体的な行動を1つ指定すると、断る理由が減ります。 同行してもらえれば、あなたの商談のどこで止まっているかが第三者の目で見えます。

同行が難しければ、録音を聞いてもらう、議事録を見てもらう、でも構いません。どこで相手の反応が変わったか。どの質問に答えられなかったか。そこまで一緒に見てもらえれば、次の商談で試すことが1つ決まります。

売り先と担当の変更を、数字を根拠に願い出る

リストや担当エリアを変えてほしいと伝えるとき、「合わない気がします」では通りません。感覚は反論されます。

かわりに、前の章で出した数字を使います。「このリストからの受注率は3か月で◯%でした。別の層を試させてもらえませんか」。

数字で言うと、上司にとっても部内で通しやすい話になります。 断られたとしても、その数字は残ります。

時間の使い方も同じです。「事務作業に1日3時間使っています。ここを減らせれば商談を◯件増やせます」と言えるなら、話は個人の頑張りから業務の設計に移ります。

社内異動なら、営業のやり方そのものを変えられる

同じ会社のなかでも、部署が変われば営業の型は大きく変わります。

新規開拓から既存深耕へ。
個人向けから法人向けへ。
外回りから内勤の営業へ。

異動が通れば、収入も人間関係も維持したまま、6つのうちいくつかを入れ替えられます。 転職と違って、収入も人間関係も手放さずに済みます。

異動の希望は、人事に直接出せる会社もあれば、上司を通す会社もあります。就業規則か社内規程を確認してみてください。

相談する前に、自分の雇用形態を確認する

会社に相談すると決めたら、切り出す前に1つ確認してください。自分が正社員か、契約社員か。 正社員は、法律上なかなか切れません。一方で契約社員は、会社の都合で契約満了とされれば、そこで終わります。

同じ相談でも、立場によって起きることが変わります。雇用契約書を先に見ておいてください。

変わらない職場の特徴

ここまでやってみて、それでも何も動かないことがあります。頼んでも流される。数字を見せても話が進まない。まともな人から先に辞めていく職場、という言い方をされるのはこういうところです。 そういう職場には、いくつか共通点があります。

当てはまるなら、あなたがこれ以上頑張り続ける理由はもうありません。

人が辞め続けているのに、やり方が変わらない

同じポジションで人が入れ替わり続けているのに、募集要項も教育の中身も去年と同じ。これは、辞める理由が個人にあると会社が本気で思っている状態です。

「続かないのは根性がないから」で説明がついてしまう職場では、環境が見直されることは起きません。 あなたが何人目かは関係なく、次の人にも同じことが起きます。

成果を出している人のやり方が共有されない

売れている人が社内にいるのに、そのやり方が誰にも共有されない職場があります。

理由はだいたい2つです。個人の成績で競わせる設計になっていて、教えると自分が損をするか、会社が型として整える気がないかのどちらかです。どちらにしても、あなたが独学で追いつくことを求められている状態に変わりはありません。

会社が売れないリスクを負っていない

給与明細を見て、基本給の欄そのものが無かったり、金額が毎月ゼロに近かったりする場合は、そこで止まってください。

労働基準法の第27条に、次のように定められています。

出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。

歩合で働く人にも、働いた時間に応じた一定額の保障を払うことが会社に義務づけられています。保障がまったくない完全歩合制は認められません。 金額の水準までは法律に書かれていないため「何割以上」という基準はありませんが、ゼロが許されないことははっきりしています。

売れなかった月の生活が丸ごと個人の責任になっている職場は、会社としてリスクを負っていません。そういう相手に、あなたが一方的にリスクを負い続ける理由はないはずです。労働基準監督署に相談できます。

環境を変えた人は、その後どうなったのか

辞めたあとどうなるのかが見えないままでは、決めようがありません。

同じ人でも、売り方が変わると数字が変わった

本人は何も変えていないのに、誰にどうやって会うかを変えただけで数字が動いた人がいます。3人の例を挙げます。

訪問で新しい関係をつくるのが苦手だった人が、反響中心の電話営業に移ってから数字を出しはじめました。かかってきた1件に丁寧に向き合うやり方であれば、できる人だったのです。

法人向けで伸びなかった人が、個人向けに移って成果を出した例もあります。相手の気持ちをくみ取る力が高い人で、お金をもらうところが出口になる商談より、相手の進路が決まるところが出口になる商談のほうが合っていました。

逆に、電話でうまくいかなかった人が、対面に切り替えてから関係づくりが得意になった例もあります。誠実そうに見えるという、その人がもともと持っていたものが、電話越しには伝わりようがなかったわけです。

3人とも、変えたのは誰にどう会うかだけです。売る力そのものを鍛え直したわけではありません。

辞めてよかったかどうかは、何が変わったかで決まる

営業を離れてよかったと言えるかどうかは、辞めたこと自体では決まりません。分かれ目は、何が変わったかです。

つらさの原因が土日の稼働だった人が、土日の無い仕事に移れば当然よくなります。原因が売り先の作り方だった人は、職種ごと変えてもそこが埋まりません。

だから、辞める前に何が足りていなかったのかを特定しておきます。

会社を辞めずに変わった人もいる

環境を変えるといっても、会社を出るとは限りません。

休職中に会社と話した結果、辞めさせられるどころか配置転換になった人がいます。勤怠がよく、努力しようとする姿勢を会社が評価していたためでした。本人は、解雇を告げられる覚悟で相談に行っています。 結果は逆でした。

上司との関係が変わって動いたケースは、もっと多いです。担当も売り先も、決めているのはたいてい直属のマネージャーになります。

変わらなかった人にも、共通点がある

ここまでは、職場の側にあるものを見てきました。ここからは、環境を変えても残るものの話をします。分けて考えてください。

環境を変えても変わらなかった人もいます。ただ、その共通点は、あなたがいま心配していることとは違います。

成果は関係ありません。1つは勤怠と態度です。無断で休む、業務を放り出す。これは移った先にも持っていきます。

もう1つは、いまの自分と、望んでいる条件との差を認めないことです。土日は完全に休みたい、固定給は最低30万円ほしい、きつい仕事はしたくない。そう言い続けている限り、どの会社を見ても同じ会話になります。小学生がプロ野球選手の球を打てないのと、話は同じです。先に、人より上に立てるものを1つ作る。順番はそちらが先になります。

きつい言い方をしました。それでも書いたのは、ここを飛ばして次を紹介したところで、同じことがもう一度起きるからです。

転職という選択肢

社内で動かせるものを試して、それでも変わらないとわかったなら、そのときにはじめて外に出る話になります。順番としては、ここが最後です。

人材紹介の会社をやっている人間が書くことではないかもしれません。それでも、はっきり言っておきます。転職を前提にして動くのは、お勧めしません。

いちばん避けたいのは、モヤモヤを抱えたまま次に移ってしまうことです。何が嫌だったのかを整理しないまま動けば、同じことが次の職場でも起きます。

私は、この会社がいいですよと押し切ることもできます。面接に強引に行ってもらって内定を取ってもらうこともできます。やりません。 決めるのは私ではなく、入る本人だからです。

いま休職しているなら、元の会社に戻る道も選択肢に置いたまま、情報収集だけは続けてください。実際に一度、企業と話してみるところまで進むといいです。転職したほうがいいという結論になることもあれば、いまの会社に残るという踏ん切りがつくこともあります。 どちらに転んでも、比べたうえで決めたことになります。

変えるのは職種ではなく、まず職場

転職を考えると、まず「営業以外の職種」を探しはじめます。ただ、その前に確かめてほしいことがあります。

あなたがつらかったのは、6つのうち何が足りなかったからでしょうか。もしそれが売り先の設計や上司の育成だったなら、それらが揃っている営業の職場に移れば、つらさの中身は変わります。 職種を変えると、これまで積んだものが使えなくなります。捨てる前に、置き場所を変えるという選択肢も並べてみてください。

厚生労働省の令和6年 雇用動向調査によると、転職した30代前半のうち、前職より賃金が増えた人は46.1%でした。そのうち36.0%は1割以上の増加です。同じ調査で、賃金が減った人も24.2%います。

上がる側と下がる側を分けているのは、行き先の選び方です。

給料の決まり方を考えるときも、自分の働き方だけでなく、会社の評価や報酬の仕組みを確かめてください。

歩合の割合は、業界でだいたい決まっている

「歩合が何割の会社か」で選ぶのは、お勧めしません。歩合を多めに置いている会社は、たいてい歩合そのものが青天井です。上限がないので、何割という言い方が成り立ちません。

見るなら業界です。歩合の割合が大きいのは、不動産、M&A、訪問営業です。訪問営業のなかでは、インフラ、ガス、太陽光、蓄電池あたりが多くなります。

固定給の割合が大きいのは、人材紹介、IT、とくにSaaS、それにメーカーの営業です。人材の大きな会社では、歩合が毎月ではなく賞与で出る形もよくあります。

訪問営業が市場で高く評価される理由

訪問営業は、私が見てきた範囲では、営業のなかでは上位に見られます。 営業手法にNGがない人だと伝わるからです。そのうえで、楽ではありません。門前払いもされますし、嫌な思いもします。そこをごまかすつもりはありません。

飛び込みの経験を、面接で話せる記録にする方法は、飛び込み営業の記事の「面接で話せる記録を残す」に書きました。

営業を離れないと消えないつらさもある

いっぽうで、環境を入れ替えても残るものがあります。
人に何かを勧めること自体が、内容にかかわらず苦しい。
数字で評価される状態そのものに耐えられない。
相手の反応を、自分の価値の評価として受け取ってしまう。

この3つに心当たりがあるなら、職場を変えても同じことが起きます。

その場合は、営業以外の職種を検討する段階です。確かめたうえで選んだのだから、次は迷いません。

面接で聞く6つの質問

求人票に書かれている「風通しの良い社風」「アットホームな職場」からは、何もわかりません。かわりに、面接で次のように聞いてみてください。

  • 目標の数字は、どうやって決めていますか
  • ターゲットは会社が決めますか、個人が探しますか
  • 商談で使える資料や事例集はありますか
  • 評価の項目を教えてもらえますか
  • 上司の方は商談に同行されますか
  • 1日のうち、商談以外に使う時間はどれくらいですか

その場で答えが出てこないなら、少なくとも現場で共有されている仕組みにはなっていません。 質問しづらいと感じるかもしれませんが、これを聞かずに入ると、いまと同じ場所にもう一度立つことになります。

一次面接の担当者が言うことと、役員が考えていることは、よくずれます。 現場は調和を保ちたいと言い、役員はその空気を壊してほしいと思っている。どちらかが嘘なのではなく、両方が本音です。できるだけ上の役職の人と話す機会をもらってください。

ポストが空いていることも、いい話とは限りません。 会社の成長に人の育成が追いついていないと、ポストは空きます。少し成果を出すとすぐ引き上げられ、その時点では給料も上がるので嬉しいのですが、地盤ができていないまま上に立つと、そのあとが苦しくなります。「すぐ上に行けます」と言われたら、なぜ空いているのかまで聞いてください。

辞めると決めたあとの手順

進め方には順番があります。守れば、退職でもめる場面はほとんど起きません。

転職先を決めてから辞表を出す

在職中の転職活動は、時間の面でつらい選択です。それでも、先に決めるほうを勧めます。

理由は、辞めてからの活動には期限がつくからです。貯金が減っていく状況で求人を見ると、環境で選ぶという判断ができなくなり、早く決まるところに流れます。急いで選んだ結果、いまと同じ場所に入ってしまうのが、いちばん避けたい着地です。

いい人ばかりの職場ほど、言い出しにくい

辞めると決めたのに、切り出せないことがあります。上司も先輩もいい人で、よくしてもらった。だからこそ裏切るように感じて、口が重くなる。

先に、事実を1つ置きます。あなたが辞めることは、上司にとっては業務です。 人を預かる立場にいれば、退職の申し出は何度も受けます。驚かれることも、人格を疑われることもありません。想像しているほどの大事にはなりません。

そのうえで、恩の返し方の話をします。恩は、辞めないことでは返せません。 我慢して残り、数字が出ないまま消耗していく姿を見せることが、よくしてくれた人への返礼になるでしょうか。返せるのは、丁寧に引き継ぐことと、次の場所で伸びることです。

伝える相手は直属の上司から

退職の意思は、直属の上司に最初に伝えます。同僚や他部署に先に伝わると、上司の面子の問題が加わって話がこじれます。

タイミングは、就業規則に書かれた期限に間に合うところです。多くの会社では1か月前から2か月前と定めていて、就業規則そのものは総務に言えば見せてもらえます。

伝え方は、辞める意思を先に置いて、理由を短く添えるだけで足ります。相手を説得する必要はありません。

引き止めの条件は、環境が変わるかどうかで見る

数字を持っている人ほど、引き止めで条件を出されます。給料を上げる、担当を変える、来期は役職をつける。

判断の基準は1点です。その条件で、足りなかった環境が実際に埋まるかどうか。 担当エリアを広げるという話なら、時間の設計は悪化します。給料が上がっても、売り先も資料も変わらないなら、来年また同じところに戻ります。

条件が口頭だけなら、書面で出るかどうかを確かめてください。人事が変われば、口約束は消えます。

よくある質問

営業を1年で辞めるのは早すぎるのか

判断の基準は、環境を確かめたかどうかです。1年あれば、6つのうち何が足りないかは判定できます。逆に3年いても、そこを確かめないまま辞めれば、次も同じ場所を選ぶことになります。

面接で短期離職の理由を聞かれたら、環境の話をすると通ります。「ターゲットが個人任せで、商談の質を上げる材料がなかったため、そこが整っている環境を希望しています」。面接官が確かめたいのは、同じ理由でまた辞めないかどうかです。こう言えれば、そこに先回りして答えたことになります。

成績が悪いまま辞めると次に響くのか

数字そのものより、数字が出なかった理由を説明できるかどうかを見られます。

同じ未達でも、「商材に興味が持てず訪問件数が落ちた」と「訪問件数は部内上位だったが、比較資料がなく値引き競争になっていた」では、次の会社での見え方がまったく違います。訪問件数が上位だったほうなら、資料の揃った会社に移れば数字が出ると判断されます。辞める前に、商談の数と受注率のどちらが低かったのかを出しておいてください。

内向的で、人にあまり興味が持てなくても続けられるのか

続けられます。それどころか、私は逆のことを思っています。

まず、私がやっている人材紹介の話をさせてください。求職者と会って企業を提案するキャリアアドバイザーも、営業職の一種です。その現場で成果を出している人ほど、「自分はそこまで人に興味が持てない」と言います。 面談でそう打ち明けられたことが、何度もあります。

理由ははっきりしています。一人ひとりに入り込みすぎないぶん、つぶれずに続けられるからです。長く続けている人ほど、相手の人生を背負うのではなく、決めるのは相手だと割り切っています。

逆に「この人のキャリアを背負っているんだ」と抱え込む人ほど、うまくいかなかったときに自分が潰れます。 人材紹介で離職率が高い理由の1つが、そこです。

同じことが、営業全体にも当てはまります。その場の話術で押し切る型の職場では、内向的な人は不利になります。いっぽう、事前準備と資料の作り込みで決まる型の職場では、むしろ強くなります。

面接で「商談前の準備にどれくらい時間を取れますか」と聞いてみてください。ここに時間を割ける職場なら、内向的であることは不利になりません。

スキルが何もないけれど、営業で大丈夫か

はい、営業で大丈夫です。 むしろ、スキルが何もないからこそ、営業をやるべきだと思っています。

理由は、営業がそのまま一生使えるスキルになるからです。どんな業界に行っても、人とのやりとりは欠かせません。相手の話を引き出すこと、条件をすり合わせること、人の気持ちを動かすこと。この3つをまとめて身につけられる仕事は、営業のほかにあまりありません。

だからこそ、最初に営業を通っておくと、あとから選べる仕事の幅が大きく広がります。営業は、あなたの可能性をいちばん伸ばしてくれる仕事です。 多くの経営者は、迷ったらまず営業からやりなさいと口を揃えて言います。

SNSやAIの仕事に興味を持つ若い人も増えました。将来性がありそうに見えるからです。ただ、業界そのものはまだ小さいです。先に営業を通っておくほうが、あとでそちらに移りたくなったときにも強くなります。

工場のラインやスーパーの接客から、収入を上げたい、生活を変えたいという理由で相談に来る人を、私は何人も見てきました。そして、そこから営業の仕事で活躍している姿も、何人も見てきました。

退職代行を使ってもいいのか

引き止めが強すぎて辞められない、上司と話すこと自体が難しい。そういう状態なら、選択肢に入ります。

ただし、代行を使うと会社とのやりとりが本人の手を離れるため、離職票や源泉徴収票の受け取りが遅れることがあります。次の入社日が決まっているなら、必要な書類をどう受け取るかまで代行業者と決めてから依頼してください。

自分を責める前に、確かめてほしいこと

営業がつらいと感じるのは、あなたが悪いわけではありません。

辞めたいと感じる原因の多くは、本人よりも環境にあります。ノルマの根拠、売り先の設計、商材の資料、評価の基準、上司の育成、時間の設計。
この6つは、本来なら会社が用意するものです。

もし、1つでも当てはまるなら、「向いていない」と考えるのはまだ早いです。環境が変わっただけで結果を残せるようになった人を、私は何人も見てきました。 そして、変えたのは誰にどう会うかだけで、その人自身は何も変えていません。

まずは、いまの職場で何が欠けているのかを確かめてください。社内で埋まらないとわかったなら、そのときは別の職場を選べばいい。
辞めるという判断は、いつしてもいいんです。

ただ、6つの条件が揃っている職場かどうかは、求人票と面接だけでは見抜けません。
その中身を知っているのは、その会社と継続的にやりとりしている人間です。

そのため、表面だけ調べて終わらずに一度、転職のプロに相談してみてください。