営業のリアル
「営業やりたくない」と思ったら|嫌な作業を分けて仕事を選ぶ

求人を見ると営業ばかりで、営業だけはやりたくない。
いま営業をしていて、もう続けたくない。
そう思っているなら、その気持ちを押し込める必要はありません。やりたくないことを避けて仕事を選ぶのは、正しい探し方です。
営業職への転職を支援している私が、先にそう書いておきます。
ただ、営業ごと避ける前に、1つだけ確かめてほしいことがあります。嫌なのが、営業のどの部分なのかです。
この記事では、営業の嫌なことを、営業の形を選べば外せるもの、職場や業界で軽くなるもの、どの営業にも残るものに分けます。
読み終えるころには、自分の嫌なことを表に書き出して、営業へ進むか、営業以外へ進むかを決められます。
「やりたくない」から始める仕事選び
避けて選ぶのは正しい
営業をやりたくないと思うのは、おかしなことではありません。
以前の面談で、物を売る仕事ばかりなのは嫌だ、ブラック企業も嫌だと、嫌なものを消していって進む先を決めた人がいました。私はそれを、すごく大事な観点だと答えました。やりたいことを探すより、やりたくないことをやらない探し方のほうが、メンタルの面でも間違いなくいいと考えているからです。
消すのは職種ではなく作業
ただ、消す単位には気をつけてください。
「営業」という言葉には、いくつもの作業が詰まっています。
知らない会社を訪ねる。
電話をかけ続ける。
月の目標を追う。
お客さんに商品を勧める。
求人票では、これが全部「営業」の2文字にまとまっています。
営業をまとめて消すと、嫌な作業と一緒に、嫌ではない部分まで消えてしまいます。消すのは職種ではなく、嫌な作業のほうです。
作業の周りには、ノルマの決め方、上司の接し方、働く時間、給料の出方といった条件もあります。この記事では、作業とその周りの条件をまとめて「嫌なこと」と呼びます。
あなたが嫌なのは、営業のどの部分でしょうか。
営業の嫌なことの分け方
営業の嫌なことは、3つの行き先に分かれます。営業の形を選べば外せるもの、職場や業界を選べば軽くなるもの、どの営業にも残るものです。
営業の形とは、売り方の違いのことです。私は面談で営業の経験を聞くとき、新規か既存か、こちらから接点を作るのか相手から来るのか、電話か訪問か、個人向けか法人向けかを、分けて聞いています。同じ「営業経験」でも、この組み合わせで中身がまるで違うからです。
嫌なことの仕分け表
営業の嫌なこととしてよく挙がるものに、行き先ごとに○を付けると、次のようになります。
| 嫌なこと | 形で外せる | 職場・業界で軽くなる | どの営業にも残る |
|---|---|---|---|
| 知らない相手への飛び込みやテレアポ | ○ | ||
| ノルマ | ○(決め方) | ○(数字を作ること) | |
| 売り込み | ○(押し切る商談) | ○(人に勧めること) | |
| 上司や職場の人間関係 | ○ | ||
| 長い勤務時間 | ○ | ||
| 給料の波 | ○ | ||
| 人と話すこと | ○(話す量) | ○(話すこと自体) |
○が2つ付く行は、1つの言葉の中に、性質の違う嫌さが混ざっています。
ノルマなら、根拠の見えない数字を割り振られるのが嫌なのか、数字を作ること自体が嫌なのかで、行き先が変わります。数字を作るとは、売上や契約の件数を、決められた目標に向けて自分で積み上げていくことです。
売り込みも、断られても押し切る商談が嫌なのか、人に何かを勧めること自体が嫌なのかで分かれます。
人と話すことは、形を選べば量は減らせますが、ゼロにはなりません。人にあまり興味が持てない人のほうが成果を出していることもあり、その理由は営業を辞めたい人の疑問に答えた「内向的で、人にあまり興味が持てなくても続けられるのか」に書きました。
ここで、紙を1枚用意してください。左に自分の嫌なことを書き出し、右に、その嫌なことが表のどの列に入るかを書き込みます。表に無いものは、自分で行を足してかまいません。この記事では、この紙を「あなたの表」と呼びます。
飛び込みとテレアポは形で外せる
知らない相手を訪ねる飛び込みや、リストの上から電話をかけるテレアポは、営業の形の1つです。
反響営業は、広告やサイトを見て問い合わせてきた相手に対応する営業です。最初の接点を会社が作るので、こちらから断られに行く場面は少なくなります。
ルート営業は、決まった取引先を定期的に回り、注文や相談を受けながら提案をする営業です。
内勤の営業(インサイドセールス)も、テレアポとは違います。法人向けの内勤の営業では、ウェブセミナーなどで関心を示した相手にだけ電話をかけるやり方があります。
営業でしんどいと言われる場面の多くは、業種の名前より、こうした売り方の形で決まると私は見ています。どの形がどんな人に合うかは、営業職に向いていないと感じた人に向けて、性格ごとに合う営業の形を表にした記事で選べます。
職場や業界で軽くなるつらさ
営業の仕事の中心は数字を作ることなので、目標そのものが無くなることは期待しないほうがいい。ただ、ノルマの決め方は職場によって大きく違います。根拠のある積み上げで決めている会社もあれば、会社の目標を人数で割っただけの会社もあります。見分け方は、営業を辞めたい原因を切り分けた記事の「ノルマに根拠があるか」にまとめました。
上司との関係や働く時間も、職場の条件です。厳しい目標を出す職場が悪いわけではなく、その厳しさが合う人もいます。合うかどうかは、あなたとその職場の組み合わせで決まります。
給料の波は、業界によって出方が違います。私が紹介の現場で見てきた範囲では、固定給の割合が大きい業界と、歩合の割合が大きい業界に分かれます。業界ごとの違いは、給料の高い仕事を比べた記事の「歩合が大きい業界と、固定給が大きい業界」で確かめられます。
いま営業をしていて、あなたの表の○が「職場・業界で軽くなる」の列にしか付かなかった人は、職種を変える前に、いまの職場を確かめてください。○がいくつもの列に付いた人も、職場の列から先に確かめます。
転職を前提に動くことは、私は勧めていません。モヤモヤを抱えたまま転職してしまうのが、いちばん避けたいことだからです。職場の確かめ方は、営業を辞めたい気持ちを、職場の6つの環境に分けて確かめる記事に書きました。
○が「どの営業にも残る」の列に付いた人は、どの営業にも残る作業の章へ先に進んでもかまいません。
営業ごと避けたときに失うもの
この章は、就活中の学生や、まだ営業をしたことがない人に向けて書きます。
いま営業をしていて、○が「形で外せる」の列にだけ付いた人には、営業を続けたまま形を変える道があります。進め方は、営業職に向いていないと感じた人に向けた記事の「営業の形を変える進め方」にまとめています。
最初の実績は営業で作る
最初の仕事の選び方で、あとから選べる道の数が変わります。
スキルがまだ何も無いなら、最初のキャリアで、営業は取らないといけない。私はそう考えています。
面談で営業の経歴を聞くとき、私が必ず聞くのは数字です。月に何件の商談をして、何件決まったか。目標に対して何割で、同じ部署で何番目だったか。商談と成約の件数は、会社が変わっても読んでもらえる数字です。何も持っていない状態から、次の会社に持っていける実績を作れる仕事は、多くありません。
「手法にNGなし」という評価
嫌な作業を外した営業を選べば、手放すものもあります。
訪問営業の経験があり、どんな売り方でもやれる人は、市場でかなり求められやすい。営業手法にNGが無い、と見てもらえるからです。飛び込みとテレアポを外せば、この評価は手放すことになります。
訪問営業は、決して楽ではありません。門前払いもされますし、嫌な気持ちになることも、もちろんあります。そこをごまかすつもりはありません。
この評価のために、嫌な飛び込みを選び直す必要はありません。手放すものを知ったうえで外せば、それで十分です。形を選んだ営業でも、商談を何件こなして、何件決めたかという実績は、次の会社で読んでもらえます。
いま飛び込みをしていて、続けるか迷っている人に向けては、飛び込み営業の記事で、回る先の絞り方と、その経験が転職でどう見られるかを書きました。
嫌な作業の無い形から入る
あなたの表で「形で外せる」に○が付いた作業は、入る前に外せます。求人票の言葉と面接の質問で、その会社の営業の形を確かめてから応募してください。求人票のどの言葉を見ればいいかは、求人票で営業の形を見分けるにまとめています。
面接で「営業はやりたくない」と言う必要はありません。伝えるなら、避けたい作業の名前で伝えてください。たとえば「新規の飛び込みは避けたいです。問い合わせへの対応や、決まった取引先との関係づくりなら、力を出せると思います」のようにです。
私は、相手が自分をどう思うかより、相手に自分がどう見られているかを整えるほうが大事だと考えています。どう思われるかは相手が決めることですが、どう見えるかは、話す側がある程度選べます。作業の名前で話す人は、仕事の中身を考えて選んでいる人に見えます。
あなたの表で「どの営業にも残る」に○が付いた人は、次の章を読んでください。
どの営業にも残る作業
数字を作ることと勧めること
形を変えても、職場を変えても、どの営業にも残るものがあります。数字を作ることと、人に何かを勧めることです。
営業のいちばん基本の仕事は、数字を作ることです。反響営業でも、ルート営業でも、内勤の営業でも、ここは変わりません。私が面談で、市場から評価されやすいと見ているのも、やり方がうまくいかないときに泥臭く続けて、愚直に成果を出せる人です。
勧めることも同じです。問い合わせてきた相手にも、長く付き合う取引先にも、最後は「これはいかがですか」と勧めます。
環境を入れ替えても残るつらさは、営業を辞めたい人に向けた記事の「営業を離れないと消えないつらさもある」にも挙げています。
ここが嫌なら営業以外でいい
この2つのどちらかが嫌だとわかったなら、営業以外を選んでかまいません。
私は、営業職への転職を手伝う会社をやっています。営業に進んでもらうほうが、うちの仕事にはなります。それでも、この2つが嫌な人に、営業を無理に勧めるつもりはありません。形を変えても職場を変えても、この2つは残るからです。
では、営業以外を選ぶなら、何を基準に選べばいいのでしょうか。
営業以外を選ぶときの基準
事務の求人倍率を先に知る
営業以外の候補に、事務の仕事を思い浮かべる人もいるはずです。その前に、入りやすさの数字を見ておいてください。
有効求人倍率は、仕事を探している人1人に対して、求人がいくつあるかを表す数字です。1倍を下回ると、仕事を探す人のほうが多い状態になります。厚生労働省の統計で、2026年8月の職業別の値(ハローワークを通した求人で、パートタイムを除く)を見ると、次のとおりです。
| 職業 | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 営業の職業 | 2.20倍 |
| 営業・販売事務の職業 | 0.88倍 |
| 一般事務の職業 | 0.29倍 |
| 職業全体 | 1.17倍 |
出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)について」、職業別の値は参考統計表8-1(常用、パートタイムを除く)。営業の職業は「営業職業従事者」、一般事務の職業は「一般事務従事者」、営業・販売事務の職業は「営業・販売事務従事者」の値
一般事務の倍率は0.29倍で、求人1件を約3.5人で取り合う計算になります。求人の数は、営業も一般事務も7万件台でほぼ同じです。差を生んでいるのは仕事を探している人の数で、一般事務を希望する人は、営業を希望する人の約8倍います。
営業や販売の部門で事務を担う営業・販売事務は、0.88倍で、一般事務より倍率が高くなっています。営業の現場を知っている人なら、仕事の流れも想像しやすいはずです。事務を選ぶなら、この倍率を知ったうえで、応募の数と時間を多めに見込んでください。
移る先にも嫌なことはある
事務にも企画にも、その仕事なりの嫌なことがあります。営業を外しただけで次の仕事を選ぶと、移った先で、もう一度「やりたくない」が起きることがあります。
面談では、求人サイトで見つけた会社に入って、条件が違って続かなかったという人にも会います。そういう人には、まずその決め方が、あまりいい決め方ではなかったことを知ってもらうようにしています。自分ひとりで求人を眺めて決めると、そうなりやすいからです。嫌なものを外しただけで、次に何が入っているかを見ずに選ぶのも、同じ決め方になります。
だから、営業以外の仕事にも、あなたの表を当ててください。営業以外の仕事では、3つの列の代わりに「その仕事に入っているか」の1列で確かめます。
行の中身も、仕事が変われば入れ替わります。たとえば事務なら、毎日同じ作業を正確にくり返すことや、社内の頼まれごとを受け続けることが、行に入るかもしれません。営業の経験が活きる移り先の例は、営業以外へ移る判断の線にまとめています。
気になる求人に表を当てる
あなたの表ができたら、気になっている求人を1件だけ開いてください。営業の求人でも、事務の求人でもかまいません。いま営業をしていて、職場の列に○が付いた人は、その確かめを先に済ませてから開いてください。
仕事内容の欄を読んで、○を付けた嫌なことがその仕事に入っているかを確かめます。書かれていなければ、面接で作業の名前を出して聞いてください。
やりたくないことをやらない探し方は、作業の単位で使うと、行き先まで決めてくれます。今日やることは、求人を1件開いて、あなたの表と見比べることです。
