営業のリアル
「ルート営業はやめとけ」は本当?|新規・配送・担当社数で職場を見分ける

「ルート営業はやめとけ」。
求人を見ていて、あるいはいまの職場で、この言葉を目にしたのかもしれません。
新規開拓がないなら、自分にもできそうだと思った。
いまルート営業をしていて、このまま続けていいのかわからない。
人を紹介する仕事でルート営業の求人を見ていると、同じ「ルート営業」でも、中身は会社ごとにかなり違います。
ルート営業がやめるべき仕事かどうかは、その会社のルート営業に何が混ざっているかで決まります。
この記事では、「やめとけ」と言われる理由の出どころと、新規の割合・配送・担当社数・売上目標で職場を見分ける方法を書きます。
入る前の人は面接で何を聞けばいいかが、いま働いている人はつらさの出どころと、楽な職場で何を残せばいいかがわかります。
「やめとけ」と言われる理由の出どころ
ルート営業は、決まった取引先を定期的に回り、注文や相談を受けながら、追加の提案をする営業です。自分から新しい売り先を探しにいく新規開拓や、広告などを見た相手からの問い合わせを受ける反響営業とは、最初の接点を作る人が違います。
理由の多くは職場の条件から来る
「やめとけ」と言われる理由の多くは、ルート営業という職種ではなく、入った職場の条件から来ています。
ネットでよく挙がる理由を、何で決まるかで分けると、次のようになります。
| よく挙がる理由 | 何で決まるか | この記事で扱う場所 |
|---|---|---|
| ルート営業なのに新規開拓や飛び込みがある | 職場の条件(新規の割合) | 新規の割合を先に確かめる |
| 配送や納品までやることになる | 職場の条件(配送の兼務) | 配送と担当社数で決まる忙しさ |
| 担当が多すぎて帰りが遅い | 職場の条件(担当社数) | 配送と担当社数で決まる忙しさ |
| ノルマはないと聞いたのに数字に追われる | 職場の条件(売上目標の決め方) | 既存の取引先にも乗る売上目標 |
| スキルが身につかない、毎日が同じで飽きる | 自分の動き方(提案を持っていくか) | 楽すぎる職場の落とし穴 |
| 給料が上がりにくい | 業界と給与の仕組み | 下の段落 |
| 顧客を選べない、人間関係が固定される | どこでも残る | どこへ行っても残るつらさ |
表の上から4行は、会社ごとに大きく違います。同じ「ルート営業」の求人でも、新規開拓がほとんどない会社もあれば、新規の担当を兼ねる会社もあります。
だから私は、ルート営業という仕事を一括りに「やめとけ」とは言いません。求人に良い悪いはなく、その条件を自分が引き受けられるかどうかの相性があるだけです。
給料が上がりにくいかどうかは、ルート営業かどうかより、業界と、その会社の給与の仕組みで決まります。この仕組みは、給料の高い仕事の選び方を書いた記事の「営業職の給料の決まり方」にまとめました。
どこへ行っても残るつらさ
一方で、どの職場のルート営業にも残るつらさがあります。ここはごまかしません。
取引先は、自分では選べません。合わない担当者がいても、関係を落とすわけにはいかず、長く付き合い続けることになります。担当替えがあれば、引き継いだ取引先とは初対面から関係を作り直します。
質問サイトでルート営業のつらさを尋ねた質問には、こんなベストアンサーが付いていました。
若いうちは、取引先に軽く見られる。
取引先のほうが商品に詳しく、下手な説明ができない。
嫌われると、担当を替えてほしいと苦情が来る。
初対面が苦手な人にルート営業が合いやすいのは、初対面の回数が少ないからで、初対面がなくなるわけではありません。営業の形ごとに残るつらさは、営業職に向いてないと感じたときの記事の「合う形にもあるつらさ」にも書きました。
ルート営業が合うのは、断られ続けるのはつらいけれど、同じ相手と関係を積み上げるのは苦にならない人です。では、条件で決まる部分は、どこを見ればわかるのか。
「ルート営業」の中身を分ける条件
同じ「ルート営業」という名前でも、新規の割合、配送や納品の兼務、担当社数、売上目標の決め方で、中身は別の仕事になります。
面談と同じ質問で分けて見る
同じ人でも、行く場所が変わると成果が変わる。私は面談の現場で、それを見てきました。ある程度のところまでは、どんな仕事も頑張れば届くと、私は思っています。それでも、頑張る場所は、中身を確かめてから選んでほしいんです。
私は面談で営業の経験を聞くとき、「営業を3年やっていました」をそのまま受け取りません。新規か既存か。自分から取りにいくのか、問い合わせを受けるのか。電話か、訪問か。どこまでを自分が担当するのか。分けて聞くと、同じ年数の経験でも、やってきたことがまるで別物だとわかります。
面談で聞く項目は、営業を辞めたいと感じる原因を切り分けた記事の「何を売っているかを、先に分解する」に書きました。
このうち「新規か既存か」の答えが「既存」の営業を、ルート営業と呼んでいます。ほかの項目の答えは、会社ごとに違います。ルート営業を選ぶときは、面談の項目に加えて、この章の4つの条件も分けて見てください。
新規の割合を先に確かめる
断られる回数を決めるのは、新規開拓の割合です。ルート営業を選ぶなら、まず新規がどれだけ混ざるかを確かめてください。
決まった取引先は、こちらの顔も会社も知っています。訪ねれば話を聞いてもらえて、関係を積み上げるほど、相談が先に来るようになります。新規の割合が低いルート営業には、この良さがあります。
営業職に向いてないと感じたときの記事で、断られるのがつらい人や初対面が苦手な人にルート営業を勧めました。勧めたのは、新規の割合が低いルート営業のことです。
面接や説明会で「新規開拓はありません」と言われたら、「新規の件数の目標がない」のか、「新規の仕事そのものがない」のかを聞き分けてください。目標がなくても、空いた時間に新規を回るよう求められる職場はあります。「仕事全体のうち、新規はどのくらいですか」と割合で聞き直すと、答えが具体的になります。
新規の件数の目標がなく、空いた時間に新規を回るよう言われることもない。この状態なら、新規の割合は低いと考えてください。
配送と担当社数で決まる忙しさ
配送や納品まで担うか、何社をどれくらいの頻度で回るかで、1日のうち提案に使える時間が決まります。
商品を車に積んで届けるところまでが営業の仕事という職場もあれば、営業は提案と注文の受付だけで、届けるのは別の部署という職場もあります。配送を兼ねると、1日の多くが運転と積み下ろしに使われ、提案の準備は夜に回りがちです。
担当社数も同じです。担当が多いほど1社を訪ねる間隔が空き、訪問は顔を出して注文を聞くだけになりやすくなります。質問サイトには、50社ほどを担当していて、担当になってから一度も会って話したことのない取引先がある、という相談もありました。
帰りが遅い、提案する時間がない、というつらさは、この2つから来ていることがあります。
既存の取引先にも乗る売上目標
「ノルマはない」と言われても、取引先ごとに売上の目標が置かれていることがあります。目標が何を基準に決まるのかを確かめてください。
ルート営業の数字は、取引先の注文で動きます。取引先の業績が落ちて注文が減ると、こちらが手を抜いていなくても数字は下がります。そのとき、前年並みの目標がそのまま残るのか、取引先の事情に合わせて見直されるのかで、毎月の重さはまったく違います。
質問サイトには、取引先が決まっているからノルマはないと説明会で言われたが本当か、という就活生の質問があります。回答には、受注が見込めるぶん数字に追われる、という声もありました。目標があるかどうかより、決め方を聞くほうが、入ったあとの毎月を想像できます。
ここまでの4つの条件を、入る前にどう確かめるか。
求人票と面接での見分け方
求人票の言葉だけでは、新規の割合や配送の有無まではわかりません。面接で、数字として聞いて確かめてください。
求人票の「ルート」でわかる範囲
求人票の「ルート営業」「既存顧客中心」という言葉でわかるのは、売り方の見当までです。
求人票の言葉から営業の形の見当をつける方法は、営業職に向いてないと感じたときの記事の「求人票で営業の形を見分ける」に書きました。ルート営業の場合、その先にある新規の割合・担当社数・配送の有無・目標の決め方は、書かれていなければ面接で聞くしかありません。質問サイトには「ルート営業だと思って入ったら、実際はテレアポだった」という質問も上がっています。
面接で数字を聞く
面接では、次のことを「どのくらいですか」と数字で聞いてください。
- 仕事全体のうち、新規開拓はどのくらいの割合ですか
- 1人で何社を担当し、1社をどのくらいの頻度で回りますか
- 配送や納品は、営業が担当しますか
- 売上の目標は、何を基準に決まりますか。取引先の注文が減ったときは、どう扱われますか
- 担当替えは、どのくらいの頻度でありますか
担当替えそのものはどの職場でも起きますが、頻度は職場によって違います。担当替えが多いほど、関係を積み上げる前に初対面へ戻ることになります。
数字で聞くと、失礼に思われないか心配になるかもしれません。私は、相手が自分をどう思うかより、相手に自分がどう見られているかを自分で整えるほうがいいと考えています。数字で聞く人は、入ったあとの仕事を具体的に思い描こうとしている人に見えます。
返ってきた数字は、1日の動きに直すと読めます。担当社数に1社あたりの月の訪問回数を掛け、月の営業日数で割ると、1日に回る社数が出ます。そこに移動と配送の時間を足して、提案の準備に使える時間が残るかを見てください。
返ってきた数字に、良い悪いはありません。担当社数が多くても、訪問の頻度が低く配送がなければ、回せる職場もあります。その数字なら自分が引き受けられるかどうかで、読んでください。
楽すぎる職場の落とし穴
条件を確かめた結果、新規もなく、配送もなく、目標もゆるい職場だったとします。当たりだと思うかもしれません。
ただ、楽すぎる職場で何年か過ごしたあとに困るのは、あなた自身です。
提案しなくても回ってしまう職場
ある会社の役員から、こんな話を聞いたことがあります。顧客が優しい業界では、相手から何かを求められることがない。だから、こちらから提案を持っていかないと、営業の仕事にならない、と。
その役員は、こうも話していました。
クライアントが厳しいと、あれやれよこれやれよって言われるから、それをやるのも地獄で大変なんだけど、営業はそれは助かるかも。やらされるから
厳しい顧客の前では、言われたことをこなすだけで力がつきます。優しい顧客の前では、それが起きません。
顧客が何も求めてこない職場では、注文を受けて回るだけでも1日が終わります。数字も大きくは崩れません。だからこそ、提案しないまま何年も過ぎていきます。
評価されるのは自分で取った数字
転職の場で評価されやすいのは、自分から提案して取ってきた数字が残っている経歴です。
営業のいちばんの仕事は数字を作ることだと、私は考えています。人を採用する側の会社の担当者からも、こう言われたことがあります。
凝り固まっちゃって、中途の営業って。プライドが高くて来た商談しか捌かないみたいな、自分で取りに行かない。
ルート営業でも、既存の取引先に追加の提案をして取った売上があれば、それは自分で取りに行った数字として話せます。ルート営業を続けた先のキャリアも、この数字を持っているかどうかで左右されます。
取引先に提案を持っていく
楽な職場にいるなら、既存の取引先に追加の提案を持っていってください。まだ取引のない商品を勧める。発注の量や頻度の見直しを持ちかける。提案した件数と、そこから取れた売上を、自分で記録しておきます。それだけで、同じ毎日が、次の転職で語れる経験に変わります。
入る前の人が、楽な職場だからと見送ることはありません。面接で「既存の取引先への追加の提案は、評価に入りますか」と聞いておいてください。
私は、20代は経験を積み、30代は専門性を磨く時期だと考えています。ただし、職場を転々とすればいいわけではなく、どの経験を積むかの軸を選ぶことが大事です。提案の経験は、楽な職場にいても自分で積めます。
いまの職場がつらいとき
いまルート営業をしていてつらいなら、ここまでの条件にそのつらさを当てはめて、出どころを確かめてください。
つらさの出どころを確かめる
まず、自分の担当で数えます。
担当している取引先は、何社か。
先月、新規開拓にどれくらいの時間を使ったか。
配送や納品に、1日のどれくらいを使っているか。
売上の目標は、何を基準に決まっているか。
数えたら、つらさがどこから来ているかを見ます。帰りが遅いなら配送と担当社数、断られるのがつらいなら新規の兼務、毎月の数字が重いなら目標の決め方を疑ってください。
- 担当社数、新規の兼務、配送、目標の決め方から来ているなら、職場の条件です。次の節のとおり、辞める前に社内で相談できます
- 顧客を選べない、関係を落とせないといった、どこでも残るつらさから来ているなら、営業職は続けたまま、別の営業の形に移る道があります。進め方は営業職に向いてないと感じたときの記事の「営業の形を変える進め方」に書きました
- どれにも当てはまらず、上司や資料、評価のしかたがつらいなら、営業を辞めたいと感じる原因を切り分けた記事の「成果を左右する6つの環境」で確かめてください
数える前から「自分が甘えているだけだ」と決めないでください。
辞める前に担当の持ち方を相談する
つらさが担当社数や新規の兼務から来ているなら、辞める前に、担当の割り振りを上司に相談してください。
紹介会社の代表がこう書くのは、おかしく聞こえるかもしれません。それでも私は、転職を前提に動くことは勧めていません。モヤモヤを抱えたまま転職するのが、いちばん避けてほしいことだからです。
ルート営業なら、相談の中身ははっきりしています。担当社数を減らせないか。配送を別の人に回せないか。新規の担当から外れられないか。数えた数字を添えると、話が具体的になります。
部署を変えれば、営業のやり方ごと変えられることもあります。同じ記事の「社内異動なら、営業のやり方そのものを変えられる」に書きました。
ルート営業の経験の伝え方
転職すると決めたら、ルート営業の経験は、数字で言えるかどうかで行き先が変わります。
担当した取引先の数、追加の提案で取った売上、取引が続いた割合を数字で話せると、既存の取引先との関係を深めて売上を伸ばした経験として伝わります。
自分のルート営業で確かめる
ルート営業そのものを、避ける必要はありません。危ないのは、中身を分けずに入ることと、楽な職場で提案をやめてしまうことです。
新規の割合、配送の有無、担当社数、売上目標の決め方を、メモに並べてください。入る前の人は次の面接で聞く質問として、いま働いている人は今日の帰りに自分の担当の数字として埋めます。
4つの数字が自分の引き受けられる範囲に収まっていたら、ルート営業は選んでいい形です。そこで、自分から提案を持っていく人になってください。
